日本考古学
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煮炊き用土器の容量変化からみた本州北部の縄文/弥生
佐藤 由紀男
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2002 年 9 巻 13 号 p. 1-18

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抄録

甕・深鉢形土器などの煮炊き用土器の容量は,煮炊きの目的や内容物に規定される部分が大きい。したがって,その組成の変化は食生活の変化とも密接に関連している。
本稿では本州北部を対象に,大洞C2期から弥生III期に至る,煮炊き用土器の容量組成を検討した。そして,大洞A期とA'期の間に,10リットル以上の大形・超大形土器の組成比率の減少という変化を確認した。大洞A'期は,これらの地域で遠賀川系土器の影響を受けた『類遠賀川系土器』が出現する時期である。また,大形・超大形土器の比率が低い組成は,遠賀川系土器の特徴の一つであることから,こうした変化は『遠賀川系文化』の影響と判断した。大洞A'期の類遠賀川系土器の分布は限られているが,容量組成の変化には地域差が確認されないことから,『遠賀川系文化』の影響は,当該域全域に及ぶものと推定された。
また,2リットル未満の小形土器の比率は各時期とも高く,大きくは変化しないことも確認した。同時期の列島内の他地域と比較すれば,小形土器の比率の高い点は,当該域の際立った特徴であることも判明した。

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