日本考古学
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奈良県平野2号墳の発掘調査成果
大和における終末期古墳の調査
下大迫 幹洋
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2002 年 9 巻 13 号 p. 131-142

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抄録

平野2号墳は,奈良盆地の西部,奈良県香芝市平野地区に所在する復元推定直径約26m,高さ約6.5mの円墳である。
江戸時代以降,石室は埋没しており,現代まで石室の有無や形態等の詳細は不明であった。
今回報告するのは,平成12年7月11日から平成13年3月30日にかけて香芝市二上山博物館が平野2号墳第2次調査として実施した横穴式石室内部の発掘調査の概要報告である。
石室内は,中・近世頃に盗掘を受けており,顕著な副葬品等は検出されなかったが,石積技法や石室の形態,採集遺物等から7世紀中頃に築造された古墳と考えられる。
平野2号墳の横穴式石室は,基本的に羨道・玄室ともに花崗岩の巨石を縦位に使ってほぼ垂直に立てて構築していることが特徴的であり,玄室の床面中央部に土で構築した土台を棺台基礎として設け,玄室の床面全面に二上山の産出する凝灰岩の切石を敷き詰めた横穴式石室としては前例のない墓室構造を持つ古墳であることが判明した。
玄室の棺台基礎の上面には土師質の〓と棺の受台で構成した棺台を設置し,棺の受台の中に木棺等の有機質の棺を安置していたものと考えられ,棺の埋葬方法としても特異な埋葬形態を推定するに至った。
二上山の産出する凝灰岩の切石で構築した石室や玄室内への棺台の設置は,7世紀中頃以降の横口式石槨を主体部とする飛鳥地域の終末期古墳に盛行する墓室構造の一つであり,平野2号墳の墓室構造は,その先駆形態として飛鳥時代の古墳を考えるうえで極めて重要な資料になるものと思われる。

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