Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
Online ISSN : 2435-9777
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2021 Volume 21 Issue 2 Pages 1

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新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科が2011年に開設されてから10年が経過した。当初、ダブルライセンス学科として全国から注目され、職能団体、教育施設協議会(4団体)からは、教育に関して「各々の資格に要求される基礎教育水準を確実に達成することが肝要であり、これに対する学習環境の充実が将来の専門性の根幹をなすものである。」との声明文が発令された。そのような懸念は、4年後の本学におけるダブルライセンス国家試験合格率が88.0%(CE:96.2%/MT:90.9%)といずれにおいても全国平均合格率を上回り想像以上の結果を残すこととなった。

2020年6月30日 西日本新聞において、大分大学が新学科構想として医療系技術者の養成に特化した「メディカル・イノベーション学科」(仮称)を2023年4月に医学部に設置する構想を明らかにした。本学科がダブルライセンスという事もあり、同大学の友人よりこの構想について意見を求められた。

当初の構想では、臨床工学技士(CE)、臨床検査技師(MT)の資格取得は勿論であるが、遺伝子解析に基づく診療ができる研究者や人工臓器や医療用ロボットの開発などを研究し、医療機器を管理する等、関連医療現場業務のみならず研究者として先端医療への対応、医療マネージメントができる人材育成という新しい切り口であった。更に既に国家資格を取得している人材に対しても門戸を開き、3コース45人という少数の人数に対し、多くの講師を担当させ、高度の専門教育を行い優れた学生を育成する学科であった。

本学科も開設時は同様な内容をイメージしており、ダブルライセンス取得、先端医療に対応できる臨床技術者を育成することが目的であった。しかし、CE、MTの資格法の教育カリキュラムは、我々が考えている独自の「臨床技術者」とは異った内容であり、2022年度からの改定カリキュラムでは、臨床現場に則した多くの条件を満たさなければならないものとなっている。

2017年 厚生労働省は、保育士、介護福祉士、看護師など12の医療・福祉分野の国家試験養成課程の一部共通化を図り、人手不足・人材確保を2021年度から順次実施するとの事であった。これらの職種において資格ごとの専門課程を学べば、それぞれの資格を取れる仕組みに改められた。その結果として複数資格取得の機会を増やしたのである。その後のネット検索では、ダブルライセンスという文語はあふれていた。

近年の臨床工学分野では、2014年6月 讀賣新聞報道にて日立製作所、パナソニック、東芝などの企業と大学、政府が「ロボット手術室」の共同開発に乗り出すとの報道があった。これらの先端としてSurgical System「da Vinci」があげられ、ロボット支援下手術の保険適応が2012年から始まり、2018年には腎臓、肺臓、食道、胃、直腸、膀胱、子宮体に発生した悪性新生物、心臓弁膜症手術など12種類が認められ適応範囲が大きく拡大した。2018年日本ロボット外科学会では、前立腺がんではロボット手術が主流となり開腹手術を2014年には手術件数を追い越していると報告されている。

臨床検査分野では、2019年 臨床検査技師あり方推進WGから(一社)日本臨床衛生検査技師会会長宛に「将来に向けての臨床検査技師のあり方」提言が報告されている。そこには、「科学技術の発達や労働人口の減少により、医療、検査分野でもロボットや「人工知能(AI)」が内蔵した医療機器、検査機器の開発が進むが、これは時代が求めている潮流である。これに対して、臨床検査技師は臨床の場においては、ロボットやAIを管理する。道具として使う。お互い不足する能力を補完し合うことを目指し、国民により良い医療の提供を目指す体制を構築する」とある。他分野においての現状でも同様に、サイバーナイフ(放射線治療装置)、HAL(介護・福祉分野サイボーグ型ロボット)、PARO(セラピー効果のアザラシ型ロボット)など様々な場面でのAI内蔵ロボットの活躍が期待されている。

医療現場においてAI型ロボットの活躍が注目されている現代、医療の分野も例外ではない。しかし、教育カリキュラムと現場での相違は拭えなくOSCE(客観的臨床能力試験)、CBT(Computer Based Testing)の導入は進められているが十分とはいえない。

長年の臨床現場経験から、医療現場を取り巻く機械化の進歩は極めてスピードが速くなっており、人間(動物)のための医療が、ロボットによる医療に変化してきている。医療が人間の手を離れ、AI型ロボットが中心となるような世界がすぐそこに迫っているかもしれない。

近未来には、医療現場に排出する医療従事者の教育をどのようにしたら良いか、難しい選択をしなければならないと思われる。

 
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