Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
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2023 Volume 22 Issue 3 Pages 126-127

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病院の救急部門でのタスク・シフト先として救急救命士を活用する動きがある。今回、病院で勤務する救急救命士(病院救命士)へのアンケートから現状の問題点や展望などについて検討した。

【方法】

病院救命士が勤務する県内の施設へのアンケート。選択回答形式、一部は自由回答形式。

【対象】

村上総合病院(1)、上越総合病院(5)、糸魚川総合病院(1)、長岡赤十字病院(3)の計4施設10名。回答率は100%。

【結果】

出身は大学(1)、専門学校(7)など。卒後の年数は1~5年(7)、6~10年(1)、21年以上(2)。

就業前の情報は、病院医師(2)、学校への求人案内(6)などから得ていた。就業前に仕事のイメージは、できていた(1)、だいたいできていた(3)、ほとんどできていなかった(6)であった。卒後の年数を<5年以内>と<それ以上>に分けると、前者では求人案内から情報を得たが、事前に業務のイメージがつかめていなかった、後者では病院医師から情報を得て、だいたいイメージがつかめていたと、ほぼ全員が回答した。

病院での所属は看護部(6)、救命救急部(3)などで、勤務場所は、救急外来(10)、一般外来(5)などだった。勤務形態は、看護師とともにローテーション(3)、看護師の不足する時間帯を補う(2)、特に決まりはない・救急救命士だけで組む(各1)であった。

具体的な業務は、診察や処置・介助以外に、患者の誘導や検査出しなどの補助業務をかなり行っていた。当初イメージしていた業務との違いは小さいとの答えが多いが、自由記載では「補助業務に追われ、救急救命士としての業務が少なく感じる」などの記載が多かった。

救急救命士として処置可能な項目や特定行為は、比較的侵襲の少ない観察やバイタルサインの計測などで実行可能だが、気管内チューブの吸引などやや侵襲のいある行為では「わからない」の回答が多かった。特定行為では、静脈路確保や薬剤投与は、ほぼ実行可能だったが、気管内チューブによる気道確保については「わからない」が多かった。

院内の研修体制は、指導的な看護師(9)、教育プログラム(6)がある一方、現時点では教育体制がはっきりしていない(2)との回答があった。今後学んでいきたい内容では、検査方法や手技だけでなく、院内の用語などを挙げる回答が多かった。自由記載では、「救命士のテキストに載っていないことが多く、病院のことや救急外来での物品や処置などを学びたい」「心肺蘇生を率先して行ないたい」「気管挿管もできるようになるといい」などがあった。また、「体制の整備された二次・三次医療機関でないと、学びやスキルアップは難しい」との意見があった。

さらに「将来的には病院救命士として、独立したのものになることを希望する」」「ドクターカー・ドクターヘリ・地域医療(転院搬送など)で貢献したい」があった。具体的な方策としては、「県内の病院救命士での情報交換や勉強」「病院救命士用の学科やコースなどを作る」が挙げられた。

【考案】

今回の調査は対象が少なく、大半が救急専門医のいる病院に勤務しているという点で限界がある。しかし、導入初期での県内の病院救命士の意見をまとめた点で意義がある。

まず、卒後間もない若い病院救命士の多くで、卒前に救命士としてのイメージがつかめていなかったことは問題である。情報は学校の募集案内から得ているが、病院救命士の歴史が浅く、学校側も十分な情報を提供できていないのではと考えられた。カリキュラムに時間的な余裕のある大学などでは、病院内の情報も提供するよう検討が必要である。

就職後は、補助業務が多く、必ずしも救急救命の処置は多くない。特定行為についても、実施可能はまだ一部のみである。卒後教育は各病院で行うことが推奨されており、指導する看護師や教育プログラムが決まっていることが多いが、病院間の格差もあり、十分な体制が整っていないと考えられた。

将来については、独自の立場を確立し、より救急救命の専門性を発揮したいと思ってはいるが、どのように研鑽していくかははっきりしていない。病院救命士同士が研修するなど意見があるが、大学などの研究・教育機関が研鑽を積んでいく場を提供するなどを検討すべきであると考えられた。

 
© 2023 Niigata Society of Health and Welfare

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