Niigata Iryo Fukushi Gakkaishi
Online ISSN : 2435-9777
Print ISSN : 1346-8774
Online Activities and Their Effects on Student Volleyball Players
Rena Hamano
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2023 Volume 23 Issue 2 Pages 41-46

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Abstract

本研究では、大学のバレーボール部に所属する学生を対象に調査を実施し、コロナ禍を受けオンラインにおいてトレーニングのみならず様々な活動を実施することで、学生の意識に変化が生まれるか否かを明らかにすることを目的とした。その結果、全ての対象者がオンライン活動はチーム及び体育館での練習に良い影響を与えたと感じていることが明らかになった。また、自由記述による回答をテキストマイニングした結果からも、「関わりやすい」「とりやすい」「聞きやすい」「コミュニケーション」といった言葉が多く抽出された。また、制限解除後の体育館での練習においても、会話が増えるなど積極的に練習に取り組む様子が見られた。対象者全てがオンラインを用いた活動を好意的に評価した理由として、トレーニングのみならず様々な活動を通してインフォーマルなコミュニケーションが促進され、チーム内で会話しやすい関係性が構築されたものと推察された。通常の活動計画においても、オンラインと対面のそれぞれに相応しい目的と活動内容を設定し、コミュニケーションを深める活動を並行して行うことで、チームの成長に繋がる方策として機能するのではないかと考えられる。

Translated Abstract

In this study, a survey was conducted on students belonging to a college volleyball team to clarify whether their awareness changes due to performing various online activities in addition to training in response to the COVID-19 pandemic. The results revealed that all the subjects felt that the online activities had a positive impact on their team and gym practices. In addition, from the results of text mining of reflection by free description answer, words such as “easy to relate to,” “easy to take,” “easy to listen to,” and “communication” were extracted.

Furthermore, the students were actively engaged even in the practice sessions in the gymnasium after the restrictions were lifted, as evidenced by an increase in conversation. The reason all the subjects evaluated the online activities favorably was presumed to be that informal communication was promoted not only through training but also through various activities, communication within the team. Moreover, in the regular action plan, setting goals and tasks suitable for online and face-to-face activities, and in parallel, conducting exercises to deepen communication may function as a strategy that leads to team growth.

I はじめに

2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症は、2020年1月に日本国内でも陽性者が確認され、その後瞬く間に感染が拡大していくこととなった。それに伴い日本政府より緊急事態宣言が発令され、スポーツ界においても、練習や試合など活動のできない自粛期間が長く続くこととなった。大学スポーツ界においては、大学構内への立ち入りが制限されるなど、感染予防対策の一環として活動自粛を余儀なくされ、各チームはオンラインでのミーティングやトレーニング等に取り組まざるを得なくなった。その影響は様々な競技において報告されている1)-3)

リモートワークに移行することによって、コロナ禍においてもある一定の業務を遂行することが可能になる一方で、スポーツ競技、中でも集団スポーツにおいては関係性の希薄化が懸念されている。また、長期的にリモートワークを続けていると「疎外感や孤立を感じる」、「意思の伝達が難しくなる」4)といった問題が生じることも指摘されている。これらの問題は、当事者同士の距離が離れることにより対面コミュニケーションにおいて生じているだけでなく、電話や電子メールなどでのコミュニケーションも減ることにより、非対面でのコミュニケーションにおいても生じている。中でも、雑談などインフォーマルなコミュニケーションが減少することが指摘されている5)-8)

スポーツ界においても、緊急事態宣言や自宅待機期間などコロナ禍によって活動が制限されている時には、様々な競技やカテゴリーごとでオンライン活動を行っていた。しかしながら、取り組める内容の幅が狭く、不都合に感じることが多いことから、通常の活動が再開されてからはほとんど継続されていない。また、リモートワークに関してもマイナスな影響を及ぼすことが報告されている1)-3)。しかし、学生スポーツにおけるオンライン活動の内容やその効果や影響の報告は、管見の限り見当たらない。

もしオンライン活動に肯定的な効果や影響があるのであれば、ポストコロナ時代にあっても、トレーニングやチームビルディングの一手法として採用する価値があるといえる。そこで本研究は、大学のバレーボール部に所属する学生を対象に調査を実施し、オンラインにおいてトレーニングのみならず様々な活動を実施することで、学生の意識に変化が生まれるか否かを明らかにすることを目的とした。

II 方法

対象者はN大学女子バレーボール部に所属する女子学生31名(選手28名、スタッフ3名)で、その内訳は4年生10名、3年生6名、2年生9名、1年生6名であった。対象者は学年や役職に関係無く5グループに分配され、グループ単位でオンラインを用いた活動が実施された。グループは1ヶ月間ごとに再編成され、学年ごとにグループ編成する期間や、学年に関係なく編成する期間など、チーム内で様々なメンバーと関わり合うことが意識された。

調査期間は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う大学入構禁止期間となった3ヶ月間(2020年4月~6月)と、大学への入構が可能となり体育館での練習が再開になってからの3ヶ月間(2020年7月~9月)の計6ヶ月間とし、期間中はオンラインを利用したグループ活動を週に6回実施した。さらに3週間に1回、学生全体で活動内容報告会を実施した。(表1

具体的な活動内容を列挙すれば、合同トレーニングは筋力低下を防ぐことを目的とし、バレーボール競技に関するトレーニングを学生トレーナーが考案し実施した。レクリエーション活動の主な内容は、料理会(webで繋いだ状態で同じメニューを作り一緒に食べる)、様々なゲーム、ファッションショー、メイク講習、母の日や父の日に手紙を書き発表、オススメ商品紹介など、バレーボールやトレーニングに関係なく、各グループでコミュニケーションを通しての信頼関係構築を目指し、チームビルディングに繋がる内容を実施した。

すべての活動が終了した時点で、指導者によって本活動に対するアンケート調査を実施した。(表2)なお、調査に先立ち本調査がオンライン活動の効果を調査することを目的としている点、研究結果の公表は個人を特定できないように配慮する点(匿名性・学年のみ記入)、回答内容は普段の活動に影響がないことを対象者に確認し、同意を得た上で行った。また、調査への協力は任意であり、自らの意思で中断することも可能な状態で実施した。アンケートの配布と回収は学生代表が行い、調査対象者31名全員から回答が得られ、回収率は100%であった。

アンケート調査の分析は、設問(3)~(8)をそれぞれ回答ごとに相対値化し比較検討した。設問(1)および(9)は全ての対象者が「はい」と答えたことから、(2)および(10)をテキストマイニング(AIテキストマイニング、User Local社、日本)にて分析し、頻出単語の検証を行った。

III 結果

アンケート調査の結果について示す。(1)オンライン活動はチームに良い影響を与えたと思いますか?という問いに対しては、すべての対象者が「はい」と回答した。続く(2)なぜそう思いますか?(自由記述)の回答について、文字数の平均値は25.06文字、標準偏差は12.66文字、最大値は55文字、最小値は8文字であった。テキストマイニングした結果、「関わりやすい」「とりやすい」「話しやすい」の単語が頻出語句として示された。(図1

また、(3)オンライン活動で行った【トレーニング】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」61.3%、「やや思う」38.7%という回答が得られ、その他の項目の回答はなかった。(4)オンライン活動で行った【料理会】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」64.5%、「やや思う」19.4%、「どちらでもない」9.7%、という回答が得られ、「あまり思わない」「全く思わない」という回答はなかった。また、「行っていない」という回答が6.5%であった。(5)オンライン活動で行った【討論会】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」54.8%、「やや思う」19.4%、「どちらでもない」9.7%という回答が得られ、「あまり思わない」「全く思わない」という回答はなかった。また「行っていない」という回答が16.1%であった。(6)オンライン活動で行った【レクリエーション活動】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」74.2%、「やや思う」9.7%、「どちらでもない」6.5%という回答が得られ、「あまり思わない」「全く思わない」という回答はなかった。また、無回答が9.7%であった。(7)オンライン活動で行った【学年ミーティング】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」80.6%、「やや思う」6.5%、「どちらでもない」9.7%、「あまり思わない」3.2%という回答が得られ、「全く思わない」「行っていない」という回答はなかった。(8)オンライン活動で行った【活動内容報告会】はよかったと思いますか?という問いに対して、「思う」64.5%、「やや思う」32.3%、「どちらでもない」3.2%という回答が得られ、「あまり思わない」「全く思わない」「行っていない」という回答はなかった。

そして、(9)オンライン活動は体育館での練習に良い影響を与えたと思いますか?という問いに対しては、すべての対象者が「はい」と回答した。続く(10)なぜそう思いますか?(自由記述)の回答について、文字数の平均値は30.74文字、標準偏差は16.41文字、最大値は75文字、最小値は9文字であった。テキストマイニングした結果、「とりやすい」「聞きやすい」「コミュニケーション」の単語が頻出語句として示された。(図2

IV 考察

本研究は、大学のバレーボール部に所属する学生を対象に調査を実施し、オンラインにおいてトレーニングのみならず様々な活動を実施することで、学生の意識に変化が生まれるか否かを明らかにすることを目的とした。その結果、全ての対象者がオンライン活動がチーム及び体育館での練習に良い影響を与えたと感じていることが明らかとなった。また、自由記述による回答をテキストマイニングした結果からも、「関わりやすい」「とりやすい」「聞きやすい」「コミュニケーション」といった言葉が多く抽出された。実際のコメントとして、「会話をする時に大きな壁なく話すことができるようになったと感じる」や「学年関係なく意見が出やすくなった」などのコメントが多く見られた。沼中らは、インフォーマルなコミュニケーションが発生することは組織内での創造的な活動が促進されることを報告しており8)、また福田は、フォーマルな情報はインフォーマルコミュニケーションの中で共有される傾向にあることを報告している5)。さらにKrautらは、チームの中でメンバーがお互いに支え合いながらプロジェクトを遂行する上で、インフォーマルなコミュニケーションは、フォーマルなコミュニケーションを支える重要な役割を担っていることを明らかにしている7)。これらの知見を踏まえて本研究の結果を整理すれば、学生同士がオンラインを通じてお互いを知るための活動をすることによって、チーム内で会話をしやすい関係性が構築され、より効果的な体育館での練習を行うことができるようになったと考えられる。

バレーボールは集団競技であることから、個人のパフォーマンスだけではなく、チームワークや繋がりなど集団としてのコミュケーションが必要不可欠となる。また、体育館での練習を行う上でも、チーム内でのコミュケーションが希薄である、信頼関係が構築されていない、話しづらいなどという状態では、競技力を向上させるためのより効果的な練習を行うことは難しいのではないかと考えられる。

高橋らは、バレーボールでは、コンビネーションを左右するチームワークを高めることは技術を高めるとともに重要なことといえる9)と述べていることから、バレーボールのチーム運営において、チームワークや繋がり、信頼関係などは重要視されている。他方で、コミュニケーションを深めることに特化した活動を行っているチームは少ない。学生スポーツでも、チームワークを高めるために行っている活動としてほとんどのチームでミーティングが行われているが、チーム内でのコミュニケーションが深められていない状態で行われると、上級生やゲームに出場するスターティングメンバーの発言力が強くなる。例えば、下級生でスターティングメンバーではない学生がミーティングで進んで発言することは稀であり、話を聞くだけになってしまっていると思われる。

チームスポーツであるバレーボールにおいては、チームに所属するメンバー一人一人が同じ目標に向かい、チームが向上していくための方法を考え実行していくことが重要であり、スターティングメンバーでなくてもチームの支えとなる存在になることで、チーム全体が成長していくということも考えられる。しかし、体育館での練習だけでは、上級生と下級生、スターティングメンバーとそれ以外の選手との接触機会は少なく、考えていることや感じたことを素直に話すことは難しいのではないかと推察される。チームワークを高めるためにはメンバーの相互作用が大切であり9)、杉山は、このチーム内での相互作用を高めるためには、個人の積極的な行動や言動が必要となるが、そういったチームへの参加はコミュニケーション量によって測定されると述べている10)

杉山の見解に拠りチーム内のコミュニケーション量を増やす方策を考えたとき、オンラインの活用は一考に値する。オンラインを用いてコミュニケーション活動を行うことで、わざわざ対面で集まらなくても気軽に、且つ全体の練習スケジュール以外の時間で行うことが可能であると考えられるからである。むしろ、インフォーマルなコミュニケーション活動を行う上では、対面せず自室で行うことで、元々の上下関係にとらわれずリラックスした状態で行うことができる点に利点があるとも考えられる。本研究における対象者のチームは普段から体育館での練習の様子をビデオ撮影しており、オンラインを用いてインフォーマルなコミュケーションを行ったことにより、コロナ禍前と比べ制限解除後の体育館での練習中の学生間の会話が増え、学年や役職に関係なく積極的に練習に取り組んでいる様子が見られた。つまり本研究の結果から、対象者全てがオンラインを用いた活動を好意的に評価した理由は、トレーニングのみならず様々な活動を通してインフォーマルなコミュニケーションが促進され、チーム内で会話しやすい関係性が構築されたからであると推察される。

一方で、本研究の調査結果において、上級生のコメントとして、「チームのことを話す時は会って話す方がいい」や「上下関係が曖昧になり過ぎる」というコメントが確認された。このことから、今後はフォーマルなコミュニケーション活動は対面で行う方が好ましいのではないかと考えられる。コロナ禍という制限下で試行的に取り組んだ活動ではあったが、本研究の結果を踏まえれば、通常の活動計画においても、オンラインと対面のそれぞれに相応しい目的と活動内容を設定し、コミュニケーションを深める活動として並行して行うことで、チームの成長に繋がる方策として機能するのではないかと考えられる。

V 結論

本研究では、大学のバレーボール部に所属する学生を対象に調査を実施し、オンラインにおいて、トレーニングのみならず様々な活動を実施することで、学生の意識に変化が生まれるか否かを明らかにすることを目指した。その結果、全ての対象者が、オンライン活動によってチーム及び体育館での練習に良い影響を与えたと感じていることが明らかになった。対象者全てがオンラインを用いた活動を好意的に評価した理由は、トレーニングのみならず様々な活動を通してインフォーマルなコミュニケーションが促進され、チーム内で会話しやすい関係性が構築されたからであると推察された。

本研究のリミテーションおよび展望として、本研究はオンライン活動実施後のみのアンケート調査で構築されているため、活動実施前の状況を把握し、前後比較を行う必要があると考えられる。また、実際に行ったオンライン活動の詳細と結果との因果関係についても調査していく必要があると思われる。

利益相反

なお、本論文に関して、開示すべき利益相反関連事項はない。

References
 
© 2023 Niigata Society of Health and Welfare

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