抄録
金型の離型性を高分子と金属間の界面化学的結合,高分子と金属間の摩擦力と摩擦係数,高分子中の極性成分や低分子量成分,および金属表面の物理的因子(表面の凹凸やピンホール)との相関の観点から考察した。離型性に優れた金型の表面特性としては表面張力の小さいことが必要で,かつ成形される高分子も小さい表面張力に変える必要あることがわかった。金型中に射出された高分子の表面化学組成がどのようにして決められるかの検討により,それが金型組成の影響を強く受けることを見いだした。表面自由エネルギーの小さい金型を用いてポリマーを成形すると,成形後の表面自由エネルギーは小さくなることがわかった。樹脂が成形される金型の離型性は金型と樹脂の摩擦力と相関があり,両者の摩擦力や摩擦係数を減少させるために,金型の表面張力が小さくなるような表面付近での局所的な組成変化が起こったものと考えられる。
表面自由エネルギーの小さい金型を得るという視点から,ペルフルオロ基含有トリアジンチオールの有機めっき法によって,離型金型表面のCF3基による被覆を試み,臨界表面張力が7.5mJm-2(mJm-2=mNm-1)となる金型の表面が得られた。さらに,射出成形により金型の耐久性を模擬離型金型と未処理金型を比較することにより検討し,本方法で処理した金型がすぐれた耐久性を示すことがわかった。この表面処理技術はFθレンズおよび複雑な表面構造のピント板(ナチュラルブライトフォーカシングスクリーン)製造の金型において離型性の向上に著しく有効であった。