2001 年 2001 巻 10 号 p. 549-557
カリウム-グラファイト層間化合物(GIC)を不飽和炭化水素と反応させると,試料はゆっくりc軸方向に膨脹し黒色生成物が得られる.グラファイト層間に取り込まれたモノマー分子が層間でアニオン重合されるためと考えられる.同様の反応はルビジウム-GICやセシウム-GICの場合も認められるが,反応性はカリウム-GIC-ルビジウム-GIC > セシウム-GICの順であった.この順序は各GICの重合開始剤としての活性の違いによるものである.またモノマーによる反応性の違いは,イソプレン > 1,3-ブタジエン > スチレンの順であったが,これはバルク中で一般に知られているアニオン重合性の順序とは逆である.
カリウム-GICを各種の有機溶媒と混合したイソプレンまたはスチレンと反応させた場合でも,層間重合が認められた.芳香族有機溶媒が層間で生成するポリマーに取り込まれるという現象が認められたが,脂肪族有機溶媒は層間で生成するポリスチレンには取り込まれなかった.脂肪族はこの系に対し貧溶媒であるためと解釈できる.また,層間で生成したポリマーを加熱することによるグラファイト層はく離の試みについても言及する.
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