日本化学会誌(化学と工業化学)
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Print ISSN : 0369-4577
一般論文
酵素重合による漆液の経時変化と低湿度環境における自然乾燥性発現の関係
永瀬 喜助神谷 幸男木村 徹穂積 賢吾宮腰 哲雄
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2001 年 2001 巻 10 号 p. 587-593

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抄録

低湿度環境で自然乾燥性を持つ重合漆塗料の開発を目的として,漆液が恒温恒湿漆乾燥器(漆室)中でラッカーゼ酵素の酸化によって重合し,自動酸化反応を経て乾燥する過程の経時変化を調べた.
 生漆および透素黒目漆塗膜の乾燥過程における赤外線吸収スペクトルと抗酸化性の変化から,酵素重合が進行した漆液ほど側鎖の自動酸化が起こりやすくなると推論した.そして漆塗膜と漆液薄相の乾燥性と重合度の経時変化を調べた結果,低湿度環境で自然乾燥性を発現するときの分子量分布は,ウルシオールモノマーが27%以下に減少していることが認められた.
 これらのことから,低湿度環境で自然乾燥する重合漆は,底面積が広く底の浅い容器内で生漆に給水しながらこねり攪拌し,ウルシオールモノマーを減少させることによって得られる可能性を見いだした.

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© 2001 The Chemical Society of Japan
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