工業化学雑誌
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リグニンスルホン酸およびチオリグニンと塩素水溶液の反応
佐藤 孝一郎海老沢 きよ三川 礼
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1958 年 61 巻 9 号 p. 1090-1093

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抄録

パルプの漂白に関連して塩素処理でリグニンスルホン酸, チオリグニン等がどんな変化を受けるかをメトキシ基, スルホン基, チオリグニンのイオウに着目して実験を行った。スプルース, 樺のリグニンスルホン酸溶液にメトキシ基当たり,1~6mo1位の塩素を含有する塩素水を加え,0℃で塩素化を行った。スプルースの場合4Cl2/MeO(モル比)の塩素を反応させた時に全メトキシ基の80%がメタノールになり,それ以上塩素を反応させた場合メタノールが分解されるためかえって減少する。樺の場合約3Cl2/MeOの時に最大メタノール生成に達する。これはC9当たり4molの塩素になり,スプルースの場合と同様ベンゼン核当たり4molの塩素消費で最大メタノール生成になる。残留物中のメトキシ基を加えると合計90%以上が回収され,この付近まではメタノールになるか,またはメトキシ基として残留することが明らかになった。リグニンスルホン酸はまた塩素処理で,4Cl2/MeO付近でスルホン基の半分が硫酸となって脱離する。バニリルスルホン酸,ベラトリルスルホン酸等においても同様の結果をえた。チオリグニン,塩酸リグニンでも塩素処理でメタノールの生成が認められ, 残留物中のメトキシ基と合し, ほぼ100%の回収率をみた。チオリグニン中のイオウは2Cl2/MeO位の塩素処理で2.4%から1%へ減少した。

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