工業化学雑誌
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塩素化アイソタクチックポリプロピレンのグラフト共重合反応
大鹿 隆男林 郁弥神原 周
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1961 年 64 巻 10 号 p. 1864-1869

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抄録

不均一系で合成した塩素化アイソタクチックポリプロピレン(A)のフィルム試料について,次の5種のモノマー,MMA,AAm,AN,StおよびVAcを用いてBPO触媒あるいは紫外線照射によるグラフト共重合反応を行なった。その結果,MMAが(A)と顕著なグラフト共重合反応を起すことを見出し,これについて系統的な実験を行なった結果次のことが明らかになった。
a)(A)は上記5種のモノマーとBPO触媒あるいは紫外線照射によりグラフト共重合反応を起すことが,赤外吸収スペクトルの測定結果から明らかになった。しかし,MMA以外はいずれも僅かなグラフト量しか示さない。一方,MMAは(A)あるいはアイソタクチックポリプロピレンと顕著なグラフト量を示す。
b)紫外線照射による(A)とMMAのグラフト共重合反応では,重合温度40~50℃,モノマー濃度10%,以上の反応条件がよく,またグラフト量は重合時間に比例する。
c)紫外線照射による(A)とMMAのグラフト共重合反応は,二つの異なった機構による競走反応と考えられ,一つはポリマー中のC-Cl結合のラジカル解離により生成したポリマーラジカルから共重合反応が起り,他の一つはポリマー中の非結晶性部分に存在する3級の炭素に結合した水素に関係した共重合反応が起る。
d)グラフト共重合反応のほかに,脱塩酸反応あるいは脱塩素反応が起る。
e)グラフト共重合反応が進むにつれて架橋反応が起る。

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