工業化学雑誌
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縮合多環系炭化水素のクロマトグラフ特性
永井 利一船久保 英一
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1961 年 64 巻 4 号 p. 643-653

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抄録

ベンぜン,ジフェニル,ジフェニルアセチレン,テトラリン,ナフタリン,アセナフテン,アセナフチレン,フルオレン,フェナントレン,アントラセン,フルオランテン,ピレン,クリセン,5,12-ジヒドロナフタセンおよびナフタセンにつき,ヘキサン-アルミナ系の吸着等温式を紫外吸収スペクトル分析法により測定して,前報で提案したクロマトグラフ特性値,成長率Rgおよび固有展開比Eを算出した。一方,上記化合物のうち螢光を発して吸着帯を鑑別し得るものについて,動的にRg,Eを実測して,静的計算値と一致することを確かめることが出来た。
本系の吸着等温式は, 定濃度範囲で, いずれもFreundlich型として表現出来た。Rg の大きさは, 直線型縮合環の数の増加とともに約1/10に減ずる。Rgの小さな化合物ほど,f(c)=kcnの指数n値は小さく,固有展開比Eが小さくなる傾向がみられた。
溶質の吸着性は,紫外吸収スペクトルを比較することにより,分子の共役系と関係のあることがわかったが,興味あることに, 5,12-ジヒドロナフタセンは, スぺクトルがナフタリンのそれに近いにもかかわらず, 前者の吸着性は後者のそれより遙かに大であった。これは超共役と類似の概念で解釈した。各溶質のアルミナに対する吸着性はその電子の自由性と密接な関係にあるといえる。

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