工業化学雑誌
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酸および塩基触媒によるβ-ラクトンの重合
山下 雄也石川 義男津田 鉄雄三浦 定美
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1963 年 66 巻 1 号 p. 104-109

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抄録

酸・塩基触媒によるβ-プロピオラクトンおよび置換β-ラクトンの重合を研究し,更に得られたポリマーの末端基分析を行なって重合機構を推定した。β-ラクトンの重合速度は酸触媒による方が塩基触媒によるより大きく,置換基が入ることにより一般に低下する。β,β-ジメチル-β-プロピオラクトンは塩化スズ(IV)を使用する時β-ラクトン中最も大きな重合速度を示すが,塩基触媒によっては,モノマーの分解のみが起こる。ポリマー末端には,一般に二重結合が存在し,塩基触媒により生成したポリマーにおいては分子量と二重結合との間には相関々係があり,二重結合が多いポリマーほど分子量は小さくなっている。β-メチル-β-プロピオラクトンでは特に二重結合が多く,逆にα-メチル-β-プロピオラクトンでは著しく少ない。したがってα-水素をアルキル基で置換することによって,高分子量のポリマーを得ることができることを示した。二重結合の生成は,活性末端によるモノマーのα-水素の引き抜き(モノマーへの連鎖移動)が起こることによるものであり,その結果低分子量のポリマーならびに末端に二重結合を持ったポリマーが生成することを明らかにした。また酸触媒による重合機構をも推定した。

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