工業化学雑誌
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ビシクロ[2,2,1] ヘプタン-2- カルボン酸ビニルの合成と重合
井本 稔大津 隆行福田 和吉
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1963 年 66 巻 6 号 p. 832-836

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抄録

ビニルモノマー中の置換基の立体障害がラジカル重合にどのような影響をおよぼすかを研究する目的で, 立体配置のことなるexo型およびemdo型ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-カルボン酸ビニルを合成し, それらの重合を行なった。endo型モノマーはシクロペンタジエンとアクリル酸のDiels-Alder反応, ついでラネーニッケル触媒で水添して得られるendo-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-カルボン酸と酢酸ビニルのエステル交換によって合成した。exo型モノマーはシクロペンタジエンとアクリル酸メチルのDiels-Alder反応, 水添, ついでナトリウムメチラートでケン化して得られるexo-ビシクロ[2,2,1] ヘプタン-2-カルボン酸と酢酸ビニルのエステル交換によって合成した。これら両モノマーはアゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてベンゼン中で重合を行なった。全重合反応の活性化エネルギーは共に27kcal/molであり, 活性化エントロピーはendo型モノマーで1.8,exo型モノマーで2.6cal/mol,度であった。従って, 両モノマーの重合速度のちがいは活性化エネルギーよりも活性化エントロピーの差異にもとづくことがわかった。重合速度式としては両モノマーについて同じで, 速度は開始剤の0.5乗,モノマーの1.8乗に比例した。また, 両モノマーのスチレンに対する共重合挙動の間には差異は認められず, 酢酸ビニルのスチレンに対する共重合挙動と極めて類似することがめられた。両モノマーから得られたポリマーはナトリウムメチラートで容易にケン化され, ポリビニルアルコールに転化した。

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