工業化学雑誌
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微生物によるステロイドの変換に関する研究(第9報)11位水酸基によるD環開裂の阻害
近藤 栄二
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1964 年 67 巻 5 号 p. 724-727

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抄録

Fusarium solani(No.101)を使用しC19ステロイドを中心とした種々の基質に対する変換反応を吟味した。その結果△4-アンドロステン-3,17-ジオン(I),テストステロン(II),アドレノステロン(III)および△4,9(11)-アンドロスタジエン-3,17-ジオン(IV)の4種のものを基質にしたときにはA環が脱水素されるとともにD環がラクトン化された生成物を得ることができた。これらの中IIIから得られた△1-11-ケトテストロラクトン(XII)およびIVより得られた△1,9(11)-テストロラクトン(XIII)はいずれも文献未載の新物質と考えられる。しかし11位に水酸基を有する基質すなわち△4-アンドロステン-11β-オール-3,17-ジオン(V)あるいは△4-アンドロステン-11α-オール-3,17-ジオン(VI)からはA環の脱水素された生成物のみが得られそれぞれのラクトン体は得られなかった。またコルチコステロン(VII)を基質にしたときにもラクトン化はみられずVからの生成物と全く同じ△1,4-アンドロスタジエン-11β-オール-3,17-ジオン(XIV)が得られた。これらのことより11位の水酸基はD環のラクトン化を阻害するものと判断される。なお19-ノルテストステロン(VIII)を基質にしたときには19-ノル-△4-アンドロステン-3,17-ジオン(XVI)の他エストロン(XVII),エストラジオール(XVIII)といったA環の芳香化された生成物が得られたが予期したラクトン体は得られなかった。

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