工業化学雑誌
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添加物を用いるセッコウスケールの抑制
後藤 忠俊室谷 寛
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1968 年 71 巻 11 号 p. 1833-1837

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抄録

硫酸カルシウム(二水セッコウCaSO4 ・2H2O)スケールの熱交換器壁面上の晶出は, ある種の添加物を用いると抑制されることは一般に知られている。
本研究では,ポリメタリン酸ナトリウム,リン酸殿粉,クエン酸ナトリウムのような添加物のスケール抑制機構と抑制効果とを調べ,次の結論を得た。(1)これらの添加物はスケールの晶出を抑制する。スケールの晶出速度はv=K(c/co-A)の式で示される。ここで, Kは速度定数, c/c0 は過飽和比, A は準安定過飽和比限界である。これら添加物はK を小さくするか大大きくする。(2)晶出速度vと添加物濃度c i との関係はv=a+blogciで表わされる。aとbは定数である。(3).晶出の待ち時間t w と添加物濃度c i との関係はlogtw=a+blogciの式で表わされる。aとbは定数である。これらの結果から考えると, 抑制効果はスケールおよび熱交換器の表面への添加物の吸着によるであろう。(4)添加物のスケール抑制効果は, ポリメタリン酸ナトリウム,リン酸殿粉,クエン酸ナトリウムの順で小さくなる。(5)セッコウ(CaSO4・2H2O)の晶癖は普通針状(または柱状)であるが,クエン酸ナトリウムを添加する場合は板状である。スケール抑制効果は晶癖変化によって直接的に説明することはできない。

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