抄録
液相一段法によるエチレンからの酢酸ビニル(VAc)合成反応に用いられる各種金属塩とパラジウム塩との酢酸中における反応についてパラジウム塩の溶解性および可視吸収スペクトルより検討した。金属塩の種類,添加量および温度に著しく支配されることがわかった。その結果, 塩化パラジウム(PdCl2)の酢酸への溶解度は酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)と塩化リチウム(LiCl)の反応では極めて容易にligand交換反応が起り,LiCl添加量が大が大である場合には主として4配位のクロロ錯体が生成すると考えられた。このようなPd塩のLigand交換反応はPd塩と第二銅塩の間でも起こった。Pd(OAc)2 と酢酸ナトリウム(NaOAc)2との反応でも, パラジウムの錯体が生成すると考えられた。ソジウムクロラジウム(PdO)が生成した。Pd(OAc)2 は酢酸中では氷点においても単量体として存在している。ロパラデート(Na2PdCl 4)とNaOAcとを100℃ の脱水酢酸中および70℃ のジメチルホルムアミド(DMF)中で行うと金属パラジウムが生成した。pd(OAc)2は酢酸中では氷点においても単体量として存在していた。