工業化学雑誌
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核酸-アクリジン染料コンプレックスの光化学-核酸-アクリフラビンコンプレックスのリン光と遅延ケイ光-
久保田 幸雄藤崎 康雄三浦 政治
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1969 年 72 巻 1 号 p. 252-258

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抄録

アクリジン染料としてアクリフラビンを選び,核酸に結合したアクリジン染料の励起状態および核酸塩基-染料分子間あるいは染料-染料分子間のエネルギー移動に関する知見を得るために,核酸-アクリフラビン系の凍結水溶液中(pH7,77°K,200°K)におけるリン光と遅延ケイ光の測定を行なった。その結果,染料の励起状態の安定化には核酸の二重らせん構造が大いに寄与すること,また核酸塩基から染料分子へのエネルギー移動あるいは染料分子間でのエネルギー移動の起こることがわかった。遅延ケイ光は染料の核酸への結合状態,温度などに依存し,その機構として次の四つが見いだされた。(1)核酸塩基から染料へのエネルギー移動(77°K),(2)染料の光イオン化により生じたラジカルイオンと捕捉電子との再結合(77°K,200°K),(3)T-T消失(77°K,200°K),(4)α-リン光(200°K)。(1),(2),(4)の機構はヌクレオチド数と染料分子数との比(P/D)の増加とともに,(3)の機構は逆にP/Dの減少とともに顕著となることがわかった。

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