工業化学雑誌
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γ-酸化第二鉄粉末の溶媒中における分散性
渡辺 昭太郎
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1969 年 72 巻 4 号 p. 829-834

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抄録

水酸化第一鉄コロイド溶液を空気酸化して得られるレピドクロサイトを,加熱脱水して得たγ-酸化第二鉄(A)と,一般に磁気録音テープに使用されている型のγ-酸化第二鉄(B)について,有機溶媒中における分散性およびそれとζ電位との関係について検討した。分散性は沈降速度,沈降容積および集合粒子径に比例する量で表わし,ζ 電位はブルトン管を用いて電気泳動法により求めた。
1)溶媒中における沈降容積は,溶媒の極性が大きくなるほど小さくなり,分散性が良くなることを示す。沈降速度は,溶媒の粘度が大きくなるほど小さくなるが,極性との関係は明らかでなかった。
2)バインダー溶液中における沈降容積とその溶媒の誘電率との関係は,溶媒中における場合ほど明瞭でなく,バインダーにょってはその傾向を示さなくなる。また誘電率の小さい溶媒ほどバインダーの影響が大きい傾向がある。
3)溶媒中において,ζ 電位が大きいほど沈降容積および集合粒子径が小さく分散性が良好である。(A)/n-ブチルアルコール分散系において,電場を作用させた後沈降速度が小さくなることが認められ,電場の界面電気二重層や分散状態への影響が考えられる。
4)(A)は(B)よりも分散性が良好である。また上述の溶媒特性と分散性との関係は(A)の場合により明瞭で,それらの関係を検討する上から(A)が有利であることがわかる。

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