日本化學會誌
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蛋白に關する研究(第二十二報)
生體蛋白の彷徨變異に就て(其の三)
近藤 金助山田 孝雄岩前 博
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1933 年 54 巻 6 号 p. 486-498

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抄録

1. 8地方に栽培したる同一品種の小麥“江島神力”から同一操作によつて單離した8種のGliadinsを60%酒精液に溶解して屈折率を測定した結果から窒素當量屈折率を算出した.
2. その結果はGluteninsの場合と同様にGliadinsの種類によつて窒素當量屈折率が夫々相違して居るのみならず同一Gliadinの窒素當量屈折率もGliadinの濃度によつて相違して居るものが多いことを見出した.
3. 其の原因を考察する爲めに濃度のちがつた酒精液内に於けるGliadinの屈折率,比粘度及びvolume contraction等を精査して見た.その結果によれば酒精の濃度が異なればGliadinの化學的行爲竝に性状が著しく相違するために屈折率も亦ちがつて來ることを考證した.
4. 從つて8種のGliadinsの窒素當量屈折率が僅かではあるが相違する結果を得たのは一つにはGliadinsの單離操作の避け難き差異と供試液の酒精濃度の相違に原因し二つにはGliadinsの彷徨變異性に原因する結果であつて此等のGliadinsの本質は何れもidenticalなものであることを論證した.

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