日本化學會誌
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大豆蛋白質に就て(蛋白質の研究,第十三報)
日比野 祐
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1934 年 55 巻 7 号 p. 655-692

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抄録

1) 大豆より蛋白質Albumin, Glycinin (Globulin)及Glutelinを分離し且その性質を檢せり.
2) Glycininを種々のpHの燐酸鹽溶液と共に120°及150°に加熱し,之によって起る變化を研究しGlycininは過熱水により不溶物質と可溶物質を生じ,可溶物質はMetaprotein, Proteose, Peptone等よりなり,之等成績物は反應液のpHにより相違するを明にせり.
3) 120°に於ては等電點に近き溶液にて可溶物質生成量最小なるも,可溶物質は加水分解度反つて大にして下級分解物多量なり.
4) 150°に於ては之と趣を異にしpH=1.7にて不溶物質の生成及可溶物質の加水分解度大にしてpHの大となるに從ひ小となる. 150°の場合には加水分解と同時に逆の反應も起る事をMetaprotein及Proteoseに對する過熱水の作用により確めたり.
5) 窒素分布の研究より150°に於ける反應生成物は全體としてAmide Nの増加を認め, Diamino N或はMonoamino NのAmide Nへの移行を確めたり.この事は120°にては認めさりし點なり.
6) 各分解物の窒素分布を檢し一般に120°にてはa)不溶物質及Metaproteinは略々原蛋白に等しくb) ProteoseはDiamino Nに富みc) PeptoneはAmide N及Monoamino N多くDiamino N少き傾向を認めたり. 150°に於ては不溶物質は加水分解物の二次變化による物を含み,從つて組成に變化多く且温度高き場合高級分解物にAmide Nの減少著し.之等の傾向はpH=1.8にて著明なり.
7) Glycininの反應は燐酸鹽の存否により著しき影響を認めず.
8) Glycininの部分の加水分解により生成したるMetaprotein, Proteoseを燐酸鹽溶液と150°に加熱して起る反應はGlycininの夫と類似する事を確めたり.
9) Glycininを燐酸鹽溶液と共に加熱する時の反應に於てAmino acidが,蛋白分子より分離する速度に差あるを認めたるも,酸素の蛋白に對する反應に於けるが如く著しからず.

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