日本化學會誌
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小麥グリアヂン溶液の吸收スペクトル研究
近藤 金助山田 孝雄
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1936 年 57 巻 11 号 p. 1250-1256

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抄録

1. 普通種小麥(江島神力)から分離した8種のグリアヂン及び3種の異種小麥から分離した3種のグリアヂンの約0.2%の酒精溶液(50%)を作り吸收寫眞を撮り窒素當量吸光係數曲線を描いた.
2. 其の結果によれば11種のグリアヂンを通じて吸光係數は合致せずして最大吸收點の波長は276.5~278mμ,最小吸收點の波長は251~254mμの範圍に相違し又窒素當量吸光係數も最大吸收點に於ては36~54,最小吸收點に於ては21~32.7の範圍に於て相違した.
3. けれども上記の相違はグリアヂンの本質的相違に原因するのではなくして小麥粒内にてグリアヂンが生成する時及び小麥から分離精製せられる時に發現する彷徨變異に原因することを蛋白の成分團説とエノル化説とによつて説明した.
4. 11種のグリアヂンのうち8種は同一品種の小麥から分離し, 3種は異種小麥から分離したものである.それにも拘はらず吸收スペクトル其の他の性質を吟味した結果此の11種のグリアヂンの本質が均等であることを論述した.然る上は小麥屬にありては種,品種及び栽培條件等が相違しても種實中の蛋白の本質は相違するものではないのである.
5. 如上のことは一般生物界に於ても認め得べき通有現像であつて近縁生物は單に個體又は環境等を異にしただけでは體蛋白の本質を變動せしめないことを論述した.

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