日本化學會誌
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光電管を應用せる比色定量法に就いて
近藤 金助村山 仁
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1936 年 57 巻 8 号 p. 772-793

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抄録

1) PulfrichのStufenphotometerによつて比色定量を行へばDuboscq式の比色計を用ふる場合に比して遙かに精確なる結果を得ることは此の兩比色計の構造の原理から考察しても了解出來ることである.けれども測定が視覺によつて行はれる限り多くの誤差源を有するのみならず連續的に多數の實驗を行ひ難い缺點を有するのである.然るに光電管を利用すれば比色に當つて光のエネルギー差を電氣のエネルギーに轉換して全く機械的に測定し得る所以を詳述した.
2) 光電管を化學的研究に應用したる内外の主なる文獻を紹介して應用が廣汎に亘つて而も極めて有効に利用されて居ることを説明した.
3) セシウム眞空光電管によつて生ずる光電流を三極眞空管を用ゐて増幅して測定する装置と測定法の原理と實際とを詳述し併せて光源と濾光法とに就いて理論的竝びに實際的の考察を與へた.
4) a)硫酸銅,鹽化銅又はNaphtolgrünの水溶液の如く赤色及び赤外線を吸收する溶液にありては此の装置によりて濾光法を行はずに簡單に而も迅速精確に比色定量し得ることを實證した.
b) クロム酸,過滿俺酸加里,メチルオレンヂ水溶液等の如き赤色及び赤外線を吸收しない所の一般呈色液にありても赤色及び赤外線を濾光して除去すれば迅速精確に比色定量し得ることを示して此の装置の利用價値を一層擴大した.
c) 濾光液の濃度又は厚さを適當に變更することによつて實驗結果の精確度を一層高め得ることをも實驗によつて示した.
d) 光源からの光の分光學的組成の變化はあり得べきことであるが,本装置による時は此の變化は小であつて測定値に影響を及ぼさないことを實驗例によつて示した.

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