日本化學會誌
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海龜卵の成分と卵アルブミンの物理化學的性質
近藤 金助山田 孝雄長島 正夫
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1937 年 58 巻 1 号 p. 108-117

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抄録

1. 薩摩國西海濱にて採集したるアカウミガメCaretta olivaceaの卵について卵白,卵黄,卵殼を分離秤量し前二者を別々に分析定量して鶏及鶉の卵についての同様なる實驗結果と比較對照した.
2. 海龜卵白から3種の蛋白即ち1/2飽種硫安液にて沈澱するグロブリンI, 2/3飽和硫安液にて沈澱し水には不溶性のグロブリンII及び2/3飽和硫安液にて沈澱するが水には可溶性のアルブミンを分離した外に寒天状を呈してゐる物質をも白色粉末として分離した.
3. 海龜卵アルブミンの物理化學的性質を研究して鶏卵アルブミンの性質と對照し兩者間には顯著にして又彷徨變異の域を越えたる相違あることを示して兩アルブミンこそは互に特異性を有する相對變異の例であることを論述した.之を實驗の項目に分けて示せば次の通りである.
(a) 等電點はpaH=5.7~5.8であつて鶏卵アルブミンの等電點paH=4.84に比較すれば明かに特異的である.
(b) 海龜卵アルブミン液の屈折率を測定した結果から窒素當量屈折率μを算出しμはアルブミンの濃度に應じて直線的に増減することを示した.更にアルブミン液の屈折率は溶液の反應に應じて變動し等電點に於て最高となることを示し其の原因はZwitterionのHydration及びIonization等が促進抑制せられる爲めであることを論述した.
(c) 海龜卵アルブミンの吸牧スペクトルを撮影し吸光係數曲線を描いた.其の結果よリ,此のアルブミンは鶏卵アルブミンに比べて多量の環状アミノ酸を含むことを推量した.
(d) 海龜卵アルブミンの凝固温度を測定し,鶏卵アルブミンの凝固温度よりも10°高いことを示した,而して海龜卵白は水分多くして(98%),胚に對する榮養料として役立つことは少ないが保護物としての任務を果して得るのは卵白中のアルブミンの特異性に基くことを論證した.
本報告のうち卵類の分析は長島之を行ひ蛋白の分離と其の物理化學的實驗研究は山田之を行つたのである.

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