鹽化物に關する化學熱力學的研究(第九報)

2H₂O+2Cl₂=4HCl+O₂の平衡恒數に就て

抄録

(1) 互に測定法を異にするMoldenhauer;著者;中島,奧野の酸素による鹽化マグネシウムの酸化反應の平衡恒數と温度との三組の關係が全く一致して居る點から最早その眞否に關し疑問の餘地を認めないことを述べ,その平均値として次式を計算した.
log K_p=-1224.21/T+1.720
この關係から反應の熱力學的數値を求めれば次ぎの如くなる.
MgCl₂+1/2O₂=MgO+Cl₂
ΔH₂₉₈=8103 calΔF^o₂₉₈〓=4353 calΔS₂₉₈=12.58 E. U.
(2) Moldenhauer及び著者の測定した水蒸氣による鹽化マグネシウムの酸化平衡恒數を夫々酸素による鹽化マグネシウムの酸化反應の値と組み合せてDeacon法の平衡恒數を求め,文獻の値と比較し,著者の値から計算した値は大體に於いて一致を見たが, Moldenhauerの實測値に基づく關係は傾斜に相當の差異が認められる.
(3) Deacon反應に關に關し次ぎの熱力學的數値を得た.
1/2H₂O+1/2Cl₂=HCl+1/4O₂
ΔH₂₉₈=6360 calΔF⁰₂₉₈=4190 cal