日本化學會誌
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奈良縣下葛川産のコバルト鑛物に就いて(第二報)
砒素及び硫黄の微量分析法の檢討
田中 信行
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1943 年 64 巻 4 号 p. 443-449

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抄録

第一報に於ては本鑛物中の鐵,コバルトの分析法に就いて報告した.本報に於て主分たる他の2元素,即ち砒素及び硫黄の分析法に就いて檢討した結果を報告する.
1) 砒素の定量法としては,還元劑の存在のもとに濃鹽酸溶液にて蒸溜し,溜出せる鹽化砒素(AsCl3)を水に吸収せしめて亞砒酸となし,臭素酸カリウム溶液に依り滴定する方法を檢討した.最初臭素酸カリウムに依る亞砒酸基準溶液滴定の正確度を吟味し,しかる後に蒸溜法を檢討した.砒素として70γ~700γの範圍に就いて行つた實驗の結果は,砒素の量が200γ以下のときは誤差がやゝ大きく4%を越へることもあるが, 200γ以上なるときは相當の正確度を有し,本鑛物の微量分析に適用出來ることが判明した.
2) 硫黄の定量法としてはC. H. Fiskeの方法を採用し,方法の定量限界及び二三の共存イオンの影響を調べた.酸化して硫酸根となしベンヂヂンに依りアセトンを含む溶液からベンヂヂン硫酸鹽として沈澱せしめ,特別なる濾過管を用ひて濾過し1/100N苛性ソーダ溶液に依りて滴定した.硫黄として0.5mg~1mg或ひはそれ以上に相當する量を對象として提案されたFiskeの方法はそれ以下20γ位迄適用出來ることが判明した.硫酸ナトリウムの基準溶液を用ひて行ひたる結果は硫黄として20γ~200γの範圍に於ては平均誤差±2%, 200γ以上では2%以下である. Fe+++, Co++,及びAsO4〓の共存する場合に就いては豫めFe+++を苛性ソーダに依りて除けば,硫酸ナトリウムのみの場合と同様なる定量結果を得た.

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