日本化學會誌
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デヒドロゲナーゼ酵素模型のチアゾル誘導體に關する研究(第二報)
田所 哲太郎福本 途夫
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1943 年 64 巻 4 号 p. 493-495

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抄録

著者等は曩に9種のヌクレオチード型及びチアゾル型デヒドロゲナーゼ作用ある物質に就き報告し,1)前者に屬するヌクレイン酸と其誘導體及び後者に屬するヴィタミンB1と其誘導體の大部分は,生體内に存するが故に酵素として之を取扱ひたり.然るにその一部は生體内に存すること疑はしく,殊に合成法によるチアゾル誘導體を得たれば酵素模型として前報2)に述べたり.即ち4-メチル・5-β-ヒドロオキシエチルチアゾルは僅に水に溶解し251mμに吸收スペクトルを顯はし枸櫞酸,焦性葡萄酸デヒドロゲナーゼとして作用する場合AlCl3, CaCl2及びMgCl2のM/30000液によりpH8.0にありて賦活効果を認め尚ほグリセリン,フラクトースにても該酵素作用を有す.該チアゾルを沃素吸收を行ふとき焦性葡萄酸,デヒドロゲナーゼ作用は減退するが故に分子構造中の二重結合と酵素作用の關係あるべきことを推定せりと述べたり.本報告には續て結果を述ぶ.
1) 合成4-メチル・5-β-ヒドロオキシ・エチルチアゾルの沃素吸收後MgCl2によるデヒドロゲナーゼ作用の賦活効果は減退す.
2) 合成により得たるものの吸收スペクトルは251mμにあリヴィタミンB1分解によりて得たるもの270mμにあり,前者と異るが故に前者は4-メチル・2-ヒドロオキシチアゾルとも疑はる.
3) 合成とB1分解による兩酵素模型は焦性葡萄酸と枸櫞酸とを基質とするとき作用を比較して前者稍々強し.
4) 合成品とB1分解より得たるものと酵素作用上其差少きもウロン酸グルコサミンを基質とする場合マンノースに比し勝る.
5) 合成4-メチル・5-β-ヒドロオキシ・エチルチアゾルは元素分析結果炭素及び水素は理論値に合致し窒素は極めて近似値を示す.

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