日本化學會誌
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奈良縣下葛川産のコバルト鑛物に就て(第三報)
グローコドート鑛の在在と其の化學的研究
田中 信行
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1943 年 64 巻 5 号 p. 602-607

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抄録

奈良縣吉野郡十津川村下葛川産のコバルト鑛物を分析し,本鑛物が本邦未産のグローコドート鑛なることを明にした.
本鑛物は銀白色の結晶粒をなし白色粗粒の石英脈中に散點し,一部は緑泥石の集合體中に埋沒して居る.結晶の重量は大きなもので1~2mg,大部分は1mg以下である.各結晶に就き組成を決定せんが爲,第一報及び第二報に於て述べたる如く鐵,コバルト,砒素,硫黄の各元素に就き定量法を檢討したる後,鐵,コバルトの定量には混合比色法を,砒素,硫黄の定量には容量法を採用した.又他の結晶に就き比色法を用ひてニッケルを定量した.
各結晶の平均値として,
鐵18.10%,ロバルト14.21%,砒素44.77%,硫黄19.43%,ニッケル0.29%
を得たが此の値はグローコドート鑛の組成と一致する.
鐵とコバルトの和,砒素及び硫黄の分析値は各結晶に就き略一致するに對し,鐵とコバルトの値は相當な變動を示し, Fe/Co比の最小は0.83,最大は1.76であつた.又其の分布はほゞ誤差函数の關係を滿足した.

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