日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
解糖の機構の研究(第2報) α-メチル-α-オキシアセト酢酸の脱炭酸速度
菜嶋 健夫
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 80 巻 8 号 p. 900-903

詳細
抄録

解糖反応のうちで果糖 1,6-ニリン酸のアルドラーゼによる C3-C4 開裂の段階の機構をモデル実験により明らかにするためにこの研究を行なった。モデル化合物としてα-メチル-α-オキシアセト酢酸を選んだ。この酸のβ-炭素,α-炭素およびカルボン酸の炭素がそれぞれ果糖の C2,C3 および C4 に相当し,果糖の C3-C4 開裂はこの酸の脱炭酸に相当する。いろいろの条件のもとでこの酸の脱炭酸速度を測定し,α,α-ジメチルアセト酢酸の脱炭酸速度と比較すると,α-メチル-α-オキシアセト酢酸の脱炭酸速度の方が大きかった。ピリジンと酢酸の混合水溶液中では数種の金属イオンはα-メチル-α-オキシアセト酢酸の脱炭酸をいちじるしく促進する。一方α,α-ジメチルアセト酢酸にはそのような現象はなかった。以上の実験観察から果糖二リン酸がとくに C3-C4 のところで分裂して, C4-部からはアルデヒド,C3-部からはアルコールを生じ易いのは,主としてつぎの理由によるものと思われる。 a.この糖の構造が, 1 C2がケトンであること。2 C3に水酸基があること。b. 微量の金属イオンが酵素とコンプレックスをつくり,これが C3-C4 開裂をいちじるしく促進する。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top