1960 年 81 巻 11 号 p. 1643-1645
Mattauch型下ニ重収束質量分析器を用い,同種試料棒の両電極間に高周波スパークをさせると,試料棒が炭素,ケイ素,ゲルマニウム,セレン,テルルなど半導体元素および半金属元素アンチモンではそれぞれ1価の多原子分子イオンができ,金属元素ではみとめられない。多電荷単原子イオンは試料の種類に関係なくつねにできる。異種の試料元素間のスパークでできるイオンはおのおのの元素同志のスパークからできるイオンと同種のものである。なおアルミナ被覆タンケステン線,白金線などを熱イオン源とし・これに加熱電流を流し線の温度上昇にともなう放出イオン(熱イオン)の変化を質量スペクトル写真でとらえた。白金の場合を1例にとると,スパークではPt+~Pt+のように単原子で多電荷のイオンまでできるのに対し熱イオンでは不純物イオンNa+,K+など1価の単原子だけであり,Pt+イオンさえみとめられない。以上のような実験結果から,スパークによるイオン生成の機構について熱イオンとの比較の下に検討し,固体試料の結合様式と多原子分子イオン生成との関係を指摘した。
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