日本化學雜誌
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微アルカリ性および酢酸酸性溶液中におけるα-ニトロソ-β-ナフトールとコバルト(II)との反応
志村 博
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1962 年 83 巻 1 号 p. 1-6,A1

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抄録

微アルカリ性および酢酸酸性溶液申において,α-ニトロソ-β-ナフトール(α-Nph・H)に過剰のコバルトを加え,錯塩沈殿量測定,反応母液のペーパークロマトグラフィー,ポーラログラフィー等により反応生成物の検索および定量を行ない,つぎの結果を得た。3価コバルト錯塩の生成時に酸化剤として作用するα-Nph・Hの還元生成物ならびに還元生成物の分解物質として1-アミノ-2-ナフトール,1,2-ナフトキノンそのほか2,3種類の物質を検出した。またα-Nph・Hとコバルトの反応機構を提案した。種々の条件で生成した錯塩をクロマトグラフィーで精製し,分離した不純物をペーパークロマトグラフィーによりさらに分離し,また錯塩沈殿量を秤量してつぎの結論をえた。α-Nph・Hあるいはコバルトが過剰な溶液からえた錯塩は無水Co(α-Nph)3と有機不純物からなり,反応溶液の酸性度が減少すれば,錯塩中の不純物の色調は赤紫色から褐色へと変わり,その量も減じるので,錯塩の色調もしたがって赤榿(赤紫)色から赤褐へと汚染され,一方錯塩中のコバルト含量は増大する。Co(II)R2錯塩はどのような溶液からも得られない。α-Nph・Hを過剰に加えるコバルトの重量分析法においては,反応溶液の長時間の加熱は錯塩沈殿量を増大する。これは生成したナフトキノンが共存するα-Nph・Hと加熱されることにより反応し,40%酢酸に難溶な物質を生成し,これが錯塩中に混入する結果である。反応時の酸性度が酢酸酸性の場合は錯塩沈殿申に混入する不純物量はCoR3・2H2O(Co9.65%),Feiglの組成式で表わされる結晶水量に等しくなる。この酸性度よりも反応時の酸性度が減少すれば錯塩中のコバルト含量は大となるから,錯塩沈殿量は小となり沈殿量からは正しいコバルト量を算出できない。

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