日本化學雜誌
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塩化アルミニウムによるプロピレンの重合に対する塩化水素の効果
今中 利信広田 鋼蔵
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1964 年 85 巻 6 号 p. 359-362,A29

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抄録

蒸着塩化アルミニウムの重合活性を調べるために溶媒を除いた状態で,プロピレンの重合反応を研究した。その結果つぎのことがわかった。a)活性は塩化水素を入れると生じ,その添加量には適量が存在する。b)塩化水素を加えたのち排気した系における活性は,排気しない系よりもはるかに低い。c)塩化水素添加後の活性化エネルギーは約4kca1/mo1である。d)生成物申にはアルミニウムと塩素とが存在し,その含有量は塩化水素の添加とともに増し,同一添加量では排気すれば減少し,反応温度が低下すると減少する。e)重合物申に芳香族化合物が存在する。f)赤外吸収スペクトルの測定から,塩化アルミニウムニ量体Al2Cl6は塩化水素を添加しても橋かけ構造を保持したままと解釈されるが,蒸着層の表面においてごく微量の塩化アルミニウムの橋かけ構造が破壊されている可能性はある。g)487cm-1の吸収帯の強さは塩化水素の添加によりわずかに,塩化アルミニウムを薄層にすると強くなる。
以上の結果を総括すると,プロピレンの重合は,カルボニウムカチオンを開始剤として起り,Al2Cl7-,または,AlCl4-が対イオンとなって重合が進行していくと推論できる。

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