日本化學雜誌
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曳糸のレオロジー
完戸 俊助伊藤 良夫
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1964 年 85 巻 9 号 p. 517-525,A43

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抄録

粘稠な液体が滴下する際観察される曳糸について理論的取り扱いを試みた。滴下管の半径が(3/4・σ/ρg)1/2(σ:表面張力,ρ:比重,g:重力)であるとき,ニュートン粘性体(粘度η)の滴下曳長l'は
l'=4.2(η/ηe)2/3 ηe=2.4poise
で与えられる。
この式を構造粘性液体に応用するには,ηのかわりに移行状態での粘度ηtrを用いねばならない。これは液体の伸び速度が滴下の際準定常状態で変わっていくので,そのずり速度の変わりつつあるときのずり抵抗として定義されるものである。これは著者らの高分子液流動についての理論から
と導かれた。ηappは見かけ粘度,θdは微分緩和時間,Δtはずり速度の変動の時間である。このηtrを使うことによって実験結果は十分解明される。
引き上げ曳糸長についても論及している。その構造粘性体についての結果は,液糸が滴下曳糸のときと同じような作用で曳糸されるが機械的に棒を引き上げることによって,変動時間Δtと液糸の伸び速度の有効値は滴下曳糸のときと異なってくる。同様の解釈が紡糸液についても拡張された。

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