日本化學雜誌
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吸収スペクトルによるクリスタルバイオレットとポリアクリル酸との相互作用の研究
宗田 敏郎吉岡 甲子郎
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1966 年 87 巻 4 号 p. 324-328,A19

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抄録

Beerの法則にしたがう濃度領域でクリスタルバイオレット(CV)水溶液の吸収スペクトルにおよぼすポリアクリル酸(PAA)およびそのナトリウム塩(NaPA)の影響を検討した。CV-PAA系ではCVの可視部の吸収帯(λmax=591mμ)は色素に対する高分子電解質の当量比(P/D)が増加すると短波長側にメタクロマジー帯(λmax=520mμ)が出現して,P/Dが10付近でもっとも顕著になる。P/D<10ではメタクロマジー帯は消滅して595mμにλmaxをもつ吸収帯が発達する。CV-NaPA系ではメタクロマジー帯は507mμ付近にλmaxをもちP/Dが4~70の問でほとんど同一の吸収スペクトルを示す。
高分子電解質のsite上での色素間の相互作用をあらわすパラメーターであるstacking coefficient(k)を計算したところ,CV-PAA系ではP/D=10でk=70,P/D<10でk=30,CV-NaPA系ではk=250の値を得た。このことからCV分子はPAAのsite上よりNaPAのsite上で相互作用に有利であると結論されるが,これはポリアクリル酸の解離に帰因するものと解釈される。

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