日本化學雜誌
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弱酸およびその緩衝溶液の中のアルミニウム電極の電流・電位曲線と塩素イオンの影響
田中 信行高橋 朗子玉虫 伶太
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1966 年 87 巻 4 号 p. 355-358,A20

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抄録

ポテンシオスタット法による電流・時間曲線および定常電流・電位曲線の測定から,リン酸またはシュウ酸イオンを含む水溶液中におけるアルミニウム電極の陽極酸化皮膜形成ならびにそれに対する塩素イオンの効果を検討した。塩素イオンを含まない溶液中での酸化皮膜形成に対する電流・時間および電流・電位曲線は,リン酸およびシュウ酸イオンについてほとんど同じ傾向を示した。溶液中に微量の塩素イオン(0.2~10mmol/l)が存在する場合には,電極電位が正になるにつれてアルミニウムの陽極溶解が顕著になるが,その際の電流・時間曲線には二つの型があることがわかった。その一つは,電解開始後ある時間が経過してから溶解による電流が流れ始めて定常値(皮膜形成に対応する電流よりも大きい)に達するものであり,他の一つは,電解開始直後に溶解電流が流れるが,それは時間とともに減少して皮膜形成に対応する定常電流値に到達するものである。本研究の結果,リン酸およびシュウ酸イオンによる陽極皮膜形成過程に対する塩素イオンの効果には相違が認められ,一般に,リン酸塩溶液中ではシュウ酸塩の場合にくらべて塩素イオンによるアルミニウムの陽極溶解が起りにくいことがわかった。

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