日本化學雜誌
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モノアジドペンタアンミンコバルト(III)塩化物の結晶構造
久司 佳彦小宮山 好道黒谷 寿雄
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1967 年 88 巻 8 号 p. 847-854

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抄録
モノアジドペンタアンミンコパルト(III)塩化物[CoN3(NH3)5]Cl2の結晶構造を単結晶X線回折法により決定した。結晶は単斜晶系に属し, 空間群はP21/n, また格子定数はa-10.42±0.02Å, b=13.37±0.03AÅ, c=6.90±0.02Å, β=93.0±0.5°である。密度の値1.80g ・cm-3よりZは4となる。解析は二次元で行ない, Rの値は326個の反射について0.145である。
結晶は錯イオン[CoN3(NH3)5]2+と塩素イオンCl-が大略フッ化カルシウム型に配列している。錯イオンは6個の窒素原子, すなわち5個のアンモニア分子の窒素原子(これらをN(1)~N(5)とする)とアジド基(これをN(6)-N(7)-N(8)とする)の一端N(6)がコバルト原子を八面体状に囲み, この八面体の一隅からアジド基の他端N(7), N(8)が突出している。アジド基をも含めた錯基全体の対称は1で, 対称要素は存在しない。コパルト原子と窒素原子の距離は1.97~1.98Å, N-Co-Nの結合角は89°~91° である。配位しているアジド基は直線型をなし, その窒素原子間の距離はN(6)-N(7)120Å,N(7)-(8)1.10Åである。また, Co-N(6)-N(7)の結合角は143°である。
この結晶には, 結晶学的に独立なCl-イオンが2種類含まれている(それらをCl(1), Cl(2)とする)。結合距離や角度から考えて, CI-イオンとアンモニア分子間に水素結合があると思われる場所が4箇所存在し, Cl(1)についてはN…Cl(1)3 .18~3.47Å∠Co-N-Cl(1)100°~113°, Cl(2)についてはN…Cl(2)3.23~3.29Å, ∠Co-N…Cl(2)104°~112°の範囲にある。なお, アジド基の一端N(8)は他の錯基のアンモニア分子に対して,2.93Å, 3.12Å と近接しているがCl-イオンからは4.0Å 以上はなれている。
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