日本化學雜誌
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天然水における鉄の共沈能力
秋山 紀子半谷 高久
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1968 年 89 巻 10 号 p. 933-938

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抄録

天然水中で溶存有機物から懸濁有機物が生成される機構として水酸化鉄(III)による有機物の共同沈殿現象を取りあげ,この共沈がどのような条件下で起こるかを基礎的に検討して,数種の天然水に対する鉄の共沈能力の比較検討を行なった。
試料として湖水と海水およびこれらの天然水中の溶存有機物に関連すると考えられるいくつかの有機物の水溶液を用い,有機炭素と紫外吸光度を指標として溶存有機物の共沈量を測定した。溶存有機物の共沈は比較的広いpH範囲で起こるが,最大の共沈量はpH4.8~5.0でえられ,温度,かきまぜ,塩分の条件変化による影響は少ない。鉄の有機物に対する共沈能力は天然水の種類により異なるが,それは主として溶存している有機物の性質が大きな影響を持つためと思われる。通常の海水,湖水の鉄濃度範囲では鉄と有機i炭素の反応比は1:1から1:0(原子比)ぐらいまで変化する。そして海水,湖水に含まれる溶存有機物のうち30~50%は水酸化鉄(III)との共沈現象により懸濁有機物に変化しうることを見いだした。

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© The Chemical Society of Japan
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