日本化學雜誌
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イオンマトリックズ内の化学反応
久恒 勇
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1968 年 89 巻 12 号 p. 1143-1156

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抄録

ハロゲン化アルカリの粉末を圧縮してつくった錠剤(以後通常の呼び方にしたがってdiskという)は,固体の赤外吸収スペクトルを測定する場合によく使われているが,このdiskは有機または無機イナン化合物の固体内における化学反応の研究にも適している。disk内の反応は熱あるいは放射線によって開始することができ,その反応の進行度は各種の分光学的方法によって測定すればよい。熱分解のさい,質量の変化があるような反応では,diskを用いて赤外線分光法からえられた実験結果は,熱質量分析法によって求めた結果とよく一致している。γ線放射の実験では,常温でもdiskの中に容易にイオンラジカルが安定化される。このようにして生じたラジカルは電子スピン共鳴スペクトル法で測定できる。またラジカルの濃度が十分であれば,ラジカルに関する化学や吸収スペクトルなどの研究も可能である。現在までに行なわれてきたdiskによる実験の結果は,この実験方法が固体の化学反応やmatrixisolationなどの研究にとくに適していることを示している。

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