日本化學雜誌
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重油の水素化脱硫における触媒の被毒
管 孝男佐藤 三男
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1970 年 91 巻 12 号 p. 1103-1119

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抄録

組成や担体の違う一速のコバルト-モリブデン系触媒を用いて,カフジ(Khafji)産重油の水素化脱硫反応を行ない,触媒上に堆積する物質の化学分析,ESRおよび原子吸光による情報と脱硫活性低下との関係を求めた。連続50時間反応後の触媒は,炭素質,バナジウムおよびニッケルを堆積した。炭素質の堆積量(触媒に対して8-15wt%)は脱硫活性に対して反比例的に影響するが,バナジウムおよびニッケルの堆積量(0.1-0.7wt%および0.05-O.2wt%)はほとんど影響しない。触媒上に堆積する炭素質のスピン濃度は,グラム炭素あたり8-10×1018スピンと触媒種によらずほぼ一定であり「質」よりも「量」が脱硫活性を支配する。重油に含まれるバナジウムおよびニッケル化合物の30-80%は触媒に捕捉される。触媒上のパナジル化合物は捕捉された全バナジウム化合物の1-6%にすぎないが,ESRのg値や結合定数から推論すると,原油中に共存するパナジルボルフィリンがまず触媒上に吸着し,配位状態を変えつつ他のバナジウム化合物へ変化する。炭素質,バナジウムおよびニッケルの触媒上への堆積機構をさらに探ることを目的に,長さ200cm,内径0.8cmの触媒層におけるこれら物質の堆積分布を調べた。連続50時間および1000時間反応後の分布状況は,炭素質の堆積は入ロから出口へかけていくぶん増加するが,量的には50時間でほぼ「飽和」に達するのに対し,バナジウムおよびニッケルは,入口から出ロへかけてむしろ滅少し,その分布を維持しながら反応時間とともに増加してゆく。炭素質の堆積は「逐次的」に,バナジウムおよび昌ニッケルの堆積は「並列的」に進行すること,また触媒の被毒は,反応初期には炭素質が,後期にはバナジウムおよびニッケルがそれぞれ重要な役割を果たすことが示唆される。

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