日本化學雜誌
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無定形セレンの100℃付近における異常性
中川 敏男
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1970 年 91 巻 7 号 p. 647-649

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抄録

ガラス状セレンの加熱過程および液状無定形セレンの冷却過程で一定温度の熱処理をし,その結晶化速度を電気伝導度によウて測定した。さらに結晶セレンおよび液状無定形セレソの冷却過程における電気伝導度の温度依存性を測定した。ガラス状セレソは100℃以上の熱処理で急激に結晶化し,100℃以下ではゆるやかに結晶化する。しかし冷却過程における液状無定形セレンは100℃以上の熱処理でもゆるやかに結晶化する。これらの結晶化完了時間は結晶化温度に対しほぼ指数関数的な関係を示した。しかもこのガラス状セレンの結晶化完了時間の直線と冷却過程の無定形セレンの場合の直線が約100℃で交差する。またガラス状から結晶化したセレンの活性化エネルギーは結晶化温度の上昇とともに低下し,100℃付近で変曲点があった。さらに液状無定形セレンの冷却過程における電気伝導度の温度依存性は100℃付近で折れ曲りのある直線で温度の低下とともに減少した。これらの100℃付近における現象は無定形セレンに混じっている少数のSe8環状分子が1OO℃以上で開環し,100℃以下でその開環した分子が閉環するためと考えられる。

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