日本化学会誌(化学と工業化学)
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出発物質の異なる低温型ジルコニアの結晶化と転移
村瀬 嘉夫加藤 悦朗松本 秀夫
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1972 年 1972 巻 12 号 p. 2329-2336

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抄録

ジルコニウムの水酸化物(NH),塩化物(Cl),硝酸塩(NO),シュウ酸塩(OX),酢酸塩(AC),キレート(MA)および水和ジルコニア(Bl)を400~700℃に加熱処理してジルコニアの結晶化,成長,熱力学的に安定な単斜型への転移を粉末法X線回折,電子顕微鏡観察により調べた。結晶化の初期において加熱処理された試料に存在する相は,(1)単斜型結晶のみ(B1),(2)単斜型結晶と正方型結晶(NO,OX),および,(3)正方型結晶と非晶質相(MA,AC,NH,Cl)であった。第1の場合には単斜型結晶がゆっくり成長し,その見かけの結晶子の大きさは700℃ウゴでおよそ200Aに達した。第2の場合には正方型結晶が徐々に単斜型結晶に転移し,その見かけの結晶子の大きさは700℃で300~400Aとなった。第3の場合には非晶質相の量が減少し,正方型結晶の量が増加し,その見かけの結晶子の大きさは500℃でおよそ400℃となるがそれ以上の温度では減少する。それとともに正方型結晶が単斜型に転移,成長し,単斜型結晶子の見かけの大きさは700℃で300~400Aとなった。しかしとくに母塩の不完全分解による炭素が介在する場合には結晶成長,転移が遅れ,また正方型結晶子の見かけの大きさが極大を示さない。これらの正方型結晶から単斜型結晶への転移の挙動は母塩の種類の相違により単斜型結晶核の生成に難易があるとして説明された。

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