日本化学会誌(化学と工業化学)
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脂肪酸存在下におけるシクロヘキサンの自動酸化およびシクロヘキシルヒドロペルオキシドの分解
高光 永明浜本 俊一
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1972 年 1972 巻 9 号 p. 1587-1590

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抄録

酢酸〔1〕,プロピオン酸〔2〕,カブロン酸〔3〕,モノクロロ酢酸〔4〕およびジクロロ酢酸〔5〕のような種々の脂肪酸を添加して,シクロヘキサンの液相自動酸化およびシクロヘキサンの自動酸化の中間体とみなされるシクロヘキシルヒドロペルオキシド(CHP)の窒素気流中での分解を行ない,酸化反応における脂肪酸の触媒作用について研究した。
脂肪酸存在下のCHP分解速度は無触媒にくらべてかなり促進され,酸強度とともにその効果は大きく,CHP濃度に一次,酸濃度に0次反応であった。3.8mol%の脂肪酸を含有するn-ドデカン中の130℃,初期CHP濃度0.02mol/lのCHPの分解速度定数は,〔1〕5.98×10-3,〔2〕8.61×10-3,〔3〕7.51×10-3,〔4〕35.4×10-3,〔5〕38.4×10-3min-1であった。なお,酢酸存在下の130~170℃のその分解の活性化エネルギーは17.9kcal/molであった。この分解主生成物はシクロヘキサノール(アノール)の酸エステルおよびシクロヘキサノン(アノン)で分解生成物のケン化後の「アノール+アノン」収率は上記の分解速度定数と相関関係のある酸強度とほぼ逆の順序で,〔1〕82.3,〔2〕79.9,〔3〕80.3,〔4〕68.9,〔5〕59.1mol%であった。また,シクロヘキサンの自動酸化においても,その収率において同じような傾向がみられた。以上の結果から,シクロヘキサンの自動酸化反応で脂肪酸はCHPのイオン分解によるアノールとアノンへの指向的生成に寄与することが明らかとなった。

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