抄録
陰イオン界面活性剤による温石綿の開綿について吸着等温線,比表面積,DTA,沈降体積,光学顕微鏡観察,電子顕微鏡観察などにより詳細な検討を行なった。
開綿は陰イオン界面活性剤の第二層目の吸着が行なわれる平衡濃度の範囲で起こり,この平衡濃度の範囲での界面活性剤分子の吸着がその極性基を液側に向けて行なわれることに基づく。この場合,比較的低い平衡濃度の範囲での開綿は凝集している繊維の単なる分散によるものであり,高い平衡濃度の範囲での開綿は第二層目に吸着された界面活性剤分子の極性基同志の反発力によって繊維の結合面が分離し良好に分散するものであり,新しい表面の生成をともなった開綿であるといえる。
開綿効果は界面活性剤のCMCで最大になり, CMC以上の平衡濃度では温石綿はほぼ単繊維にまで開綿される。