日本化学会誌(化学と工業化学)
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フッ化黒鉛に対するγ線の影響
渡辺 信淳小山 哲喜田 康岩綺 又衛
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1978 年 1978 巻 12 号 p. 1618-1622

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抄録

種々の雰囲気中で結晶性の異なるフッ化黒鉛にγ線を照射し,その影響について,DTA,IR,ESCA,X線回折および化学分析により検討した。
フッ化黒鉛は真空中での照射に対してもっとも安定で,Ar,O2,H2の順に劣化の進行が速くなる。しかし,すべての雰囲気で少なくとも100Mradの照射ではフッ化黒鉛の性質はほとんど変化しない。結晶性のみがやや向上する傾向を示した。これ以上の線量で熱分解開始温度は低下し,ESCAからは酸素を含む新たな官能基の生成を示唆するピークが認められた。また,照射試料のIRスペクトルにはC-OHあるいはC-O-OHとC=Oの吸収がみられた。
γ線照射により生じるガスはSiF4,GF4,CO2であり,酸素中での照射の場合にのみCOF2が生成した。劣化の初期過程はC-Fおよび層平面末端のC-C結合であり,フッ化黒鉛中に生じたラジカルは再結合により黒鉛構造にもどる。生成したFはガラス壁と反応しSiF4を生じる。また,C-C結合の切断により放出された炭素を含むラジカルは系内に多量に存在するFと即座に反応し,HFを生じ,酸素中ではペルオキシルラジカルが生成し,これはCO2あるいはCOF2に分解する。

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