日本化学会誌(化学と工業化学)
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Claisen転位反応におよぼす塩化亜鉛の影響
林 隆俊五島 正信
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1978 年 1978 巻 7 号 p. 1007-1012

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抄録

オルト位やパラ位に電子求引性から電子供与性にわたる種々の置換基を導入したアリルフェニルエーテル類のClaisen轍反応臨化亜鉛(ZnCl2)によって触媒効果をうけることが認められた。パラ置換化合物の場合には,転位反応率におよぼす触媒効果の大きさの順位は,
CH3O>CH3>H>t-Bu>Cl>CHO≒COCH3>NO2
となり,電子求引能力の大きい置換基をもつ化合物ほど低い触媒効果を示した。
しかし,オルト置換化合物の場合には,その順位は,
CH3O>COOCH3>COCH3>CH3,CHO>H>Cl>NO2>t-Bu
となり,必ずしも電子供与能力の大きさの順位と触媒効果の大きさの順位とは一致せず,とくにカルボニル基をもつ場合の触媒効果がパラ置換化合物のそれにくらていちじるしく大きいことが認められた。IRスペクトル,溶媒効果などによる検討の結果,Claisen転位反応におよぼすZnCl2の触媒効果の大きさは,エーテル酸素へのZnCl2の配位のしやすさによって支配されており,その配位のしやすさはオルト置換基のI効果,立体効果やキレート効果などによって影響をうけていると判断された。

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