日本化学会誌(化学と工業化学)
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配向ポリアミド酸フィルムおよびポリイミドフィルムの動的粘弾性
功刀 利夫古賀 久敬橋本 穂
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1978 年 1978 巻 7 号 p. 1020-1024

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抄録

種々の配向度をもつポリアミド酸フィルムとポリイミドフィルムの動的粘弾性を測定し動的粘弾性挙動に与える分子鎖の配向の影響を検討した。
ポリアミド酸フィルムは昇温によりイミド化が進行し,E',E''値の温度依存性に大規模な変化をもたらす。イミド化はほぼ220℃で完了するが,この間イミド化以外に残存溶媒の散逸,生成水の可剤的効果,水素結合の切断などの諸現象が併起するので複雑である。ポリイミドのα分散ピークが350~390℃の温度範囲で検出され,対応するE'値の減少がとくに延伸倍率の高いフィルムで明瞭に認められた。分散ピークの温度位置は延伸倍率の高いほど低温側にシフトし,分子鎖の環状構造部分がフィルム面に平行に並び分子鎖の相互すべりが容易になるためと考察された。355~400℃付近から橋かけ反応をともなう熱劣化に起因するE'値の増大が認められた。E'の増大が開始する温度は延伸倍率の高いほど低温側でみられ,分子鎖の配列が橋かけ反応を促進すると推察された。また,空気中測定と窒素ガス中測定との結果を比較すると後者の方がE'値の増大開始が低温で現われた。このことは空気中測定では橋かけ反応を生ずる分子鎖の反応基部分が酸化され,橋かけしにくくなることを示唆するものである。

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