抄録
貝殻中の化学成分の分布型の変化による続成作用の検討のため,宮城県江の島湾の養殖ホタテガイの貝殻(freshshell)を用い,殻体の部位別,殻体別に,ナトリウム,塩素,マンガンおよびストロンチウムを非破壊放射化分析で定量した。freshshellでは同殻同生育期のものの変動がもっとも小さく,試料間でほとんど差がなかった。同殻異生育期および異殻同生育期のものは,それぞれ棲息環境差および個体差を反映して変動がやや大きかった。既報の現世貝殻(leachedshell)の含量は,freshshellにくらべ変動がずっと大きい。これは,現世貝殻の間でも続成作用で受ける変化の程度に顕著な差のあることを示すものと考えられる。