日本化学会誌(化学と工業化学)
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キトサン,カルボキシメチルセルロースおよび硫酸エステル化ポリビニルアルコールの3成分からなる高分子電解質複合体の構造と性質
菊池 康男大島 祥男
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1979 年 1979 巻 8 号 p. 1101-1105

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抄録
高分子電解質の水素イオン濃度による分子鎖の形態変化および分子鎖の屈曲性の相違,とくに屈曲性の大きい硫酸エステル化ポリビニルアルコールカリウム塩(PVSK)に着目して,キトサン水溶液,高分子弱電解質で,分子鎖の屈曲性の小さいカルボキシメチルセルロース水溶液(CMC)および強電解質であるPVSK水溶液の3種の高分子電解質から,水に難溶性の高分子電解質複合体(PEC)を異なった水素イオン濃度および滴下順序で合成した。これらの高分子電解質は,水素イオン濃度によりその解離度および分子鎖の形態の変わることが予想されるが,水素イオン濃度,滴下順序を変えて生成PECの生成量,分子構造および物性について比較検討した。水素イオン濃度の相違により,生成PECのIRスペクトル,3成分の組成比,水による膨潤の度合およびトルイジンブルーによる着色がいちじるしく異なっていた。このことからCMC,PVSKおよびキトサンの高分子電解質が,溶液の水素イオン濃度に応じて,解離度,分子鎖の形態の変化するためであることが明らかとなった。しかし滴下順序の相違による違いはあまり認められなかった。また生成PECの凝血形成についても検討を加え,キトサンとPVSKの二物質からなるPECとCMC,PVSKおよびキトサンの三物質からなるPECは,いずれも抗凝血性であることが明らかとなった。さらに屈曲性の小さいカルボキシメチルデキストラン,デキストラン硫酸ナトリウムおよびキトサンからの生成PECと比較して成分の高分子電解質の屈曲性,分子鎖の形態変化の違いが,生成PECの組成,分子鎖の形態に大きく影響することが推定された。
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