日本化学会誌(化学と工業化学)
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大気中の気体状NOxおよび粒子状物質中のNO3-濃度におよぼず降雨の影響
玉鳳 元則平木 隆年
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1982 年 1982 巻 7 号 p. 1256-1258

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抄録

大気中の窒素酸化物系汚染物質の挙動におよぼす降雨の影響を調べるため,神戸地域において,降雨時ならびにその前後の大気汚染物質濃度を測定するとともに,雨水を容量別に採取し,そのなかに含まれる各イオンを分析した。粒子状物質中に含まれる化学塵分のうちでNO8扁は降雨によるwashoutをもっとも強く受け,約10mmの降雨により,降雨直前の大気中の濃度は降雨時に約1/2,降雨直後に約1/4に減少した。このことは,粒子状NOxはおもに粒径の大きい粒子に含まれること,ならびに二次的粒子であるため,光化学的生成による補給が降雨時に停止することに基づくと考えた。
一方,気体状物質のうち,SOx濃度は降雨により,5~24%減少するのに,NOx濃度は降雨時に増加する傾向を示し,とりわけNO濃度は9~31%増加した。降雨時,他の地点にくらべて,自動車排ガスの影響を強く受ける地点でNOx濃度がとくに高くならなかったことから,このNOx濃度の増加は,気象的・地理的因子によるよりは化学反応によるものであり,おもに光化学反応によるNOxlossが降雨時に抑制されるため,見かけ上NOx濃度が高くなるものと考えた。また,降雨量の増加にしたがい,NO濃度が高くなることから,NO濃度の増加のなかには,雨水とNO霧との不均化反応(3NO2+H20=2HNO8十NO)に基づくものが含まれると考えた。

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