日本化学会誌(化学と工業化学)
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1,4-ナフトキノン類とチオ硫酸ナトリウムとの反応
新井 五郎
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1983 年 1983 巻 4 号 p. 551-555

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抄録

数種Na2S2O3の1,4-ナフトキノン類(NQ類)とチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)との付加反応について,前者の酸化還元電位(ENQ類)と後者の酸化還元電位(EST)を比較することにより,反応の律速段階および反応機構について検討した。
p-ベンゾキノンとNa2S2O3との付加反応では,Na2S2O3がキノン環に付加する過程が律速段階であることが知られていたが,NQ類とNa2S2O3との付加反応では,反応の初期段階において,むしろプロトトロピー過程が律速段階である傾向を示した。前者の反応系では,p-ベンゾキノンの酸化還元電位(EPQ)は,ESTより貴にあるが,後者の反応系では,ENQ類は,ESTより卑にあり,この差異が,律速段階に関与するものと判断された。さらに,硫黄原子の攻撃位置についても,キノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応系と同じようにΔE値(=(ENQ類またはEPQ)-EST)の正負に依存する現象が認められ,"キノン環を攻撃する硫黄原子の求核性および求電子性とΔE値との関わり"を,より明確にした。

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