日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
キノリンN-オキシドの光異性化反応無機陰イオンの効果と反応中間体
秦 憲典
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 1984 巻 1 号 p. 44-50

詳細
抄録

キノリンN-オキシドおよびその置換体を溶液中で光照射するとS1状態から反応が起こり,溶媒の性質や置換基の種類に依存してラクタムまたは1,3-ベンゾオキサゼピンへ異性化する。N-オキシド→ ラクタム(過程1)およびN-オキシド→ オキサゼピン(過程II)の反応機構ないしは反応中間体に関する知見を得るため,4-メチルキノリンN-オキシドと2-シアノキノリンN-オキシドの含水エタノール溶媒中での光化学反応におよぼす無機陰イオン(SeCN-,r,SCN-,Br-)の影響を検討した。含水エタノール中で4-メチルキノリンN-オキシドを光照射すると過程1が起こるが,2-シアノキノリンN-オキシドの場合は過程皿が進行ずる。いずれの異性化反応も上記無機陰イオンにより消光されると同時に脱酸素体(をメチルキノリンまたは2-キノリンカルボニトリル)を生成するが,その効果は陰イオンの酸化還元電位が低いほど顕著となった。また,1軸存在下で光照射したとき,2-シアノキノリンN-オキシドの場合は多量のヨウ素を遊離するが,4-メチルキノリンN-オキシドの場合にはヨウ素の生成はほとんど認められなかった。Stern-Volmer解析を行ない上記N-オキシドの光異性化反応の機構を検討した結果,過程1についてはラジカルイオソ対機構(図式2),過程互に対してはオキサジリジン中間体機構(図式1)の妥当なことが確認された。キノリンN-オキシドとその置換体のヒドロキシル性溶媒(ROH)中における光異性化反応は-般に図式3の機構にしたがって進むと考えられる。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top